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  • 執筆者の写真DISCE

10年先を見据える:スキルベースの組織へ進化するために

更新日:2023年11月27日


10年後、従来の仕事の役割は、おそらくガラケーと同じようになっていることでしょう。


『職種や、国や地域によって給料が決まることはありません。すべてのスキルにおいて、それぞれのスキルレベルに基づいて報酬を得るようになります。』と、DegreedのCEOであるDavid Blakeは、Degreedの年次フラッグシップカンファレンスであるLENSで、350人の学習専門家を前に、述べました。


Blakeが述べたことは、スキルベースの組織の特徴です。理想的には、スキル重視の企業は、職種や固定的な役割の説明よりも、人々のスキルとそのスキルのレベルを重視します。スキルベースの組織は、スキルを仕事の中心に据え、アジリティ、効率性、従業員の定着率を向上させます。


この考え方は難しく聞こえるかもしれません。スキルベース戦略への移行は、多くの伝統的な職務構造を根底から覆す可能性があります。しかし、多くの先進的な企業では、その必要性からすでにシフトが始まっています。


テクノロジーの変化のスピードは非常に速く、多くの職務やスキルセットが、必要なくなったスキルに代わる、より適切なスキルを身につける前に陳腐化しつつあるのです。


『テクノロジーは、人類が学ぶよりも速く進化するようになりました。このことは、人類が新しい時代に突入したことを意味します。その中で、スキルギャップは毎日、毎週、毎月、毎年大きくなっていきます。』とBlakeは言います。


スキルを取り入れることは、新しい革新的な働き方であり、テクノロジーに対応し、効率を高め、変化やイノベーションに素早く対応し、優秀な人材を惹きつけ、維持するために利用できるものです。

画像はDeloitte Touche Tohmatsu Limitedの提供によるものです。


どのように始めればいいのでしょうか?LENSで専門家が語ったことを見てみましょう。



1. 目的志向のアップスキリングを行い、賛同を得る


大規模な変革は、目標や夢、結果など、何かによって推進される必要があります。そして、従業員もリーダーも同様に、その理由を理解し、支持することで、推進に必要なエンゲージメントを得ることができます。


『強力なミッションによって推進される場合、学習の背後にある意味を創造することは企業レベルでも行うことができます。HP社は「2030年までに世界で最も持続可能で公正なテクノロジー企業になる」という全社的な目標を設定しました。そのため、HP社のすべてのトレーニングは、この核となる考え方に結びついています。』と、HP社のLearning Experience DesignerであるBrian Ciccotelli氏はLENSイベントで語りました。


『「WHY」が必要なのです。「収益が上がるから」「コストが下がるから」ではなく、本当の理由が。動機づけやインスピレーションを与えるようなものが必要です。』とCiccotelli氏は言います。


もうひとつ、意味を示す方法として、スキルが組織の隅々をどのようにつなぐことができるかを説明することがあります。例えば、経営コンサルティング会社Deloitte社のプリンシパルであるMichael Griffiths氏は、参加しているラーニングリーダー達に対して、『特に労働力の観点から、学習と能力開発を人材市場にマッピングすることから始めてはどうでしょうか?最も価値を示し、「What's in it for me?(自分にとってのメリットは?)」が非常に明確で生産的だからです。』と提案しています


ビジネスの目標や目的の達成にどのように貢献できるかを示すことで、個人からステークホルダーまで、社内のチャンピオン(協力者)を獲得し、目的を達成することも可能です。DegreedのChief Learning StrategistであるAnnee Bayeuxは、このようなチャンピオンをポジティブなソーシャルメディアのインフルエンサーに例えています。このような人は、フォロワーを持ち、ロールモデルとして行動し、他の従業員にもやる気を起こさせるような方法で学習の利点を広める必要があります。


『組織で一番偉い人である必要はありませんが、影響力は必要です。』とBayeuxは言います。


学習によって何が得られるか悩んでいるのは従業員だけではありません。L&D部門の担当者は、「What's in it for me?(自分にとってのメリットは?)」という質問をよく受けますが、それに答えられるように準備しておく必要があります。


その答えの根底にあるのは、学習が従業員と会社に同時に利益をもたらすという理解です。『学習が人材を育て、人材がビジネスを動かします。これはシンプルかつ真理です。』とCigna社のCLO、Jen Grubich氏は言います。



2. 従来のL&Dアプローチに対して挑戦し始める


「今やっていることで望む結果が得られているだろうか」と自問しましょう。もし答えがイエスなら、「もっと良くならないだろうか?」と問いかけてみてください。すでに知っていることだけに頼っていては、学習やアップスキリングの効率化の機会を逃してしまうことになりかねません。しかも、それは生涯学習的な行動ではありません。もっと大きく考えて、ムーンショット(達成困難な目標)を達成する方法を見つけましょう。従業員の経歴をチェックする会社であるCheckr社が行ったのは、まさにこれです。


『私たちは、最高の職場になりたかったのです。星に手を伸ばしたかったのです。』と、シニア・ラーニング&デベロップメント・スペシャリストのJamal Smith氏は言います。


従業員体験を最高のものにするために、Checkr社は教育払い戻しプログラムを根本から見直しました。従来、教育費の払い戻しは、従業員にとって素晴らしい教育給付として認識されてきました。しかし、Checkr社では、多くの組織と同様に、教育費支給の予算がわずか3.5%しか使われておらず、実際には役に立っていなかったのです。


同社のL&D担当者は革新を決意し、DegreedとLearn Inを利用して、学習奨学金とアカデミーを提供することにしました。Learn Inを利用することで、Checkr社は、コースや学習教材の費用を自腹で支払った後に払い戻しを求めるのではなく、プリペイドクレジットカードで従業員に費用を提供しました。


その結果、学習給付金の利用率は1年間で3.5%から22%以上に跳ね上がり、従業員の99%がアカデミープラットフォームにログインしていることが確認されました。


『私たちは、従業員のアップスキリングを迅速に進めています。そして、ビジネス成果を上げるために、適切な場所を確保することができるようになったのです。』と、Smith氏は述べています。



3. クリエイティブに、シンプルに、スキルベースの戦略を試す


スキルベースの学習戦略を取り入れることは、困難なことではありません。


Deloitte社のGriffiths氏は、L&D担当者に、よりニーズに合った方法で仕事を再構築することはエキサイティングなことであり、「それを楽しんでください」と呼びかけました。


イノベーションを起こす際には、従業員の経験を考慮することを忘れないでください。従業員は、スキルベースの組織へのシフトの中心であり、従業員にとって何が有効で、何が有効でないかは、変革を左右する可能性があります。


ホワイトハウスでChief Information Officerを務めたTheresa Payton氏は、当時サイバーセキュリティの方針、手順、説明があまり評価されていないことに気づきました。従業員は、トレーニングセッションに退屈し、長くて複雑なポリシーに圧倒されながら帰っていったと言います。これらの説明やポリシーは、デバイスが紛失した場合の報告など、サイバーセキュリティの管理を向上させる妨げになっていました。


Payton氏は、プロセスを簡素化し、説明を楽しくすることで、エンゲージメントを向上させ、ひいてはサイバーセキュリティを向上させました。


Payton氏は、従業員が業務用のスマートフォンを受け取る際に長いセキュリティミーティングを開く代わりに、5分間のセキュリティブリーフィングを行うプログラムを試験的に導入し、「スマートフォン・ハッピー・ミール」と呼ぶものを発行しました。その内容は、スマートフォン、キャンディ、ブランディングされたペンや鉛筆、電話番号の書かれたカードなどで、すべて密封できるビニール袋に入れられるという気の利いたものでした。従業員はスマートフォンを紛失しても、いつでもその番号に電話をかけることができます。


スマートフォン・ハッピー・ミールは、安価でしたし、クリエイティブでした。シンプルでした。そして最も重要なのは、効果的だったということです。この新しい方法のおかげで、人々は100%(それ以前は50%)、そして通常は事件発生から1時間以内(以前は1営業日)にデバイスの紛失を報告するようになりました。


最大のイノベーションは、大規模でも複雑でもない、シンプルなアイデアであることがあります。L&Dにとっての教訓は何でしょうか?すべての方針と手順をスキル中心にする作業に怯んではいけません。フィードバックを求め、どこに改善の余地があるのかを見極め、自社に最適な独自の方法で、スキルベースの実践を組織に取り入れる新しい方法を試してみてください。



4. スキルを活性化するためのデータを優先する


スキルベースの組織、あるいはスキルベースのマインドセットへのシフトは、学習とスキルのデータなしには実現できません。どのスキルがすでに組織にあり、どのスキルがまだ必要かを知る必要があります。これが貴社組織のスキルギャップです。これを理解することで、従業員の才能を伸ばし、よりよく活用することができます。そして、より的を絞った方法でL&D予算を使うことができるのです。


『すべてのシステムですべてのスキルのデータを取得しなければ、何も見えなくなってしまいます。』とBlakeは述べ、Degreed社がラーニングテクノロジースイートで経験データの収集と整理にこれまで以上に力を入れていることを明らかにしました。(今、整理されていないデータは学習担当者にとって最大の課題の1つとなっています。また、最大のチャンスでもあります。)


何から始めればいいのでしょうか?


どのデータに焦点を当てるかを決めましょう。そして、未来志向のマインドセットでそうすることです。Sonia Mooney Signature Solutions社のコンサルタントであるSonia Mooney氏は、LENSの参加者に、データドリブン型の意思決定が必要になる頃に、過去にさかのぼって必要なデータを収集することはできない、と注意を促しました。


『今必要なデータだけを考えるのではなく、将来的に何が欲しいかを考えてください。そのためには、データソースを整備する必要があります』とMooney氏は述べています。


データの収集と理解はパズルの1ピースですが、Novo Nordisk社のアナリティクス・リードであるDerek Mitchell氏は、データの力を引き出すには、L&D担当者がデータを使って何をするかが重要だと述べています。


『データを見るということは1つのことですが、それは実用的である必要があります。ただグラフを見て、「面白いね」と言うだけではいけません。学習者を助けるために、データを使って何かをしなければならないのです。』とMitchell氏は述べています。


これからの時代は、スキルベースの組織です。なぜなら、スキルは、大学学位や優秀な職位よりも、真の労働力の可能性や能力を測るのに適した指標だからです。


スキルベースのアプローチに移行するための時間は十分にあります。そして、それを成功させるための時間も十分にあるのです。一息ついて、上記のステップを確認し、どこから始めるか決めて、この先の明るい未来に胸を躍らせてください。きっとその価値があるはずです。

 

By Emily Gerson, March 21, 2023

 

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