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執筆者の写真Hiroshi Oto

ATD TK24参加レポート #2

先日レポートした「TK24参加レポート#1」の続きです。



How to Transform Training Operations With AI


プレゼンターのJohn Peebles氏は、企業の研修業務のための革新的なトレーニング管理プラットフォームであるAdministrateのCEOです。


AIが私たちの働き方や学び方に革命をもたらす中で、いくつかの非常に興味深い比喩を用いて、その影響力を説明していました。分かりやすい「スターウォーズ」の例と、世界初の「エレベーターシャフト」の例が印象的でした。


「スターウォーズ エピソード4/新たなる希望」の例は、AIがどのようにして私たちの決定を支援し、作業効率を向上させるかを分かりやすく説明していました。パイロットはデススターのものすごく小さな目標に命中させるためにコンピュータアシスト機能を使っているという例です。(ジェダイのような直感を持つ者はコンピュータをオフにしても成功を収めることができます😁)これはAIが提供するデータと洞察に基づいて、人間がより賢明な判断を下すことができる未来を象徴していると言っています。


一方で、Peter Cooper氏のエレベーターシャフトの話は、将来のために今準備をしておく必要性を示唆していました。Cooper氏は、エレベーターが発明されることを予見していましたが、実際のエレベーターが登場する数年前に世界初のエレベーターシャフトを備えたビルを建設しました😲。これは私たちがAIの進化とともに変化する未来に備え、適切なインフラストラクチャーを現時点で整えるべきであるというメッセージを伝えています。


またPeebles氏は、AIがトレーニングと人材開発の分野に革命をもたらすためには、ただテクノロジーを導入するだけでなく、その基盤となるデータモデルやインフラが不可欠であると言っていました。これらはエレベーターシャフトのように、将来の革新を支える基礎となります。このようなインフラをいまから整備することで、AIのポテンシャルをフルに引き出し、教育やトレーニングの分野でより大きな成果を達成できるようになるのだという視点に大きな共感をいだきました。



Create Learning Content in Any Language With Smartcat


AI翻訳と人間によるチェックワークフローを組み合わせた翻訳プラットフォームを提供するSmartCat社によるこのセッションはデモ中心でした。


多言語コンテンツ生成と翻訳を行えるAIベースのプラットフォームで、グローバル企業に必要不可欠なツールを提供しており、ユーザー自身が使うアプリケーションとして、どのユーザーも簡単に使用できるようになっています。

印象的だったのは、AIソーシングや翻訳品質スコアシステムなどを組み込んだワークフローです。SmartCatは、PDFやInDesignファイル、Articulate Riseから出力したXliffファイルなど、そのトレーニングに使用している様々なファイル形式のドキュメントを一括で翻訳・編集できる点です。また翻訳品質スコアにより、翻訳の品質を評価し、問題のある部分に注力することができるようになっています。さらにカスタマイズ可能な翻訳エンジン、AIコンテンツ生成ツールを使って、AI翻訳プロジェクトの管理やコース生成が簡単になっていました。こちらのセッションでも、トレーニングや人材開発におけるAIの可能性が、今後さらに広がっていくのだろうなという将来像を抱きました。


個人的には最後に紹介していたAIコンテンツ生成ツールがArticulate AIそのものな感じがしました。間もなくリリースされるArticulate AI機能が待ち遠しいです。



The Future of TD: Critical Trends for Our Hybrid World


プレゼンターのBritt Andreatta博士は、リーダーシップ、神経科学、心理学、ラーニングといった独自のバックグラウンドを持つ、今日の課題に対する科学的根拠に基づくソリューションを創造する、国際的に認められたソート・リーダーです。


冒頭では、記憶の神経科学、つまり人間の記憶の仕組みについて簡単に触れ、トレーニングをデザインするのであれば、どのような記憶を形成しているのかを理解することから始めるべきだと言っています。


また近年のトレンドを上げ、人材開発の未来を考察していました。

パンデミックによる学習と教育の未来への影響、世代間のディスラプションと教育・精神健康への影響、第四次産業革命の影響、AIとVRの活用可能性、AIとVRの導入に関する懸念など、多岐にわたるトピックを扱っていました。これらは、学習開発(L&D)専門家が直面している現代の課題とトレンドに対して非常に包括的な洞察を提供していました。


印象的だったのは、パンデミック以前に比べ、幼稚園児から大学生まで、あらゆる年齢の子どもたちは、2~3年の遅れが生じているというレポートです。公立学校の生徒80%が、パンデミックのために社会的情緒的発達が阻害され、56%が学業不振、早期退学が49%増加したというレポートを共有していました。2012年以降に誕生したアルファ世代はまさに真っ只中であり、注視が必要だということです。

またスタンフォード大学での実験で、子どもたちを2つのグループに分け、あるグループはシャチと泳ぐ物語を読み聞かせ、もう一つのグループはVRでシャチと泳ぐ体験をさせたそうです。その後、読み聞かせたグループはそのことを「物語」と認識していたが、VRのグループは現実か架空のことなのか判断つかなかったと言っています。ゆえに子どもたちには細心の注意を払う必要があり、VRなどのテクノロジーを使ったゲームなどを通して暴力的な行為に関与した脳の記憶を持つ世代の子どもたちを育てている可能性があると言います。しかしVRは驚くほどパワフルであり、習得が難しいスキルを教えることができるなど、労働力として活用できる素晴らしい方法がたくさんあります。その線引きやガイドをどう提供していくのかを我々は考えなければならないと示唆していました。


また最新のツールで作成されたトレーニングに応用できるデモを紹介していました。一つは、学習者のVRゴーグルを通してCGアバターがリアルタイムに反応するというもので、ホスピタリティ企業で実際に使われているトレーニングプログラムだそうで、会話の受け答え方でストーリーや評価が変わっていくものでした。昔は人同士がロールプレイしなければならなかった内容がデジタルで、しかもスケーリングできる形で提供されているのです。実際の画面を見て、ここまで進んでいるのだなと実感しました。

またAIビデオツールやChatGPTを使ってトレーニングコース内容を制作するデモも見せてくれました。彼女はこれらのAIツールは数百と登場するだろうと予見し、それらを使って下記のことができるとともに注意が必要だとまとめていました。

  • 時間を効率的に使うことができる

  • より良い学習をより早く創造することができる

  • 成果物を検証する必要性(正確性、バイアスなど)

  • 誤情報/詐欺の危険性に対処する必要性

  • 求人、会議内容の提案、購入商品などの最終評価をする必要性



以上、簡単ですがatd TK2024のセッションをレポートさせていただきました。その他のセッションも刺激的な内容やツールで一杯でした。逆にアメリカはここまで進んでいるのだなと衝撃を感じざるを得ませんでした。

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