クリックするだけのeラーニング以外のデザインを上司に認めてもらうのに苦労しているeラーニングデザイナーと話をした時のことです。彼女は自分の課題を次のように要約しました。
『私は、ものすごく規制された、管理責任の高い環境で働いています。私たちは、学習者ができるだけ簡単にクイズに合格できるようなeラーニングをデザインしています。クイズに合格することだけを考え、失敗を許されません。しかし、もっとクリエイティブでパフォーマンス重視の仕事ができるように上司を説得するにはどうしたらいいのでしょうか?』
あなたも思い当たることはありませんか?
例えば、正しい手の洗い方やカスタマーサービスのスキルなど、パフォーマンス要素が強い学習テーマでは、単にクイズに合格させるだけでは十分ではありません。学習者に必要なのは、失敗する機会なのです。なぜなら、失敗することは避けられないことであり、学習プロセスにおいて重要な役割を果たすからです。
ここで言う「失敗」とは、自信をなくしたり、キャリアを停滞させたりするような破壊的な失敗のことではありません。失敗を経験することで、さらに学ぶ機会が増え、学習の基礎が築かれるのです。
では、失敗を悪とする環境の中で、上司に失敗のポジティブな面をどのように話したらよいのでしょうか?ここで、いくつかのヒントをご紹介しましょう。
建設的な失敗は、リスクを管理する良い方法であると位置づける
人は、失敗するかもしれないという理由で、リスクを取ることを敬遠します。しかし、リスクを完全に回避することは現実的ではありませんし、個人や組織の成長を促すような行動も促進されません。
そこで、eラーニングの出番となるのが「リスクマネジメント」です。なぜなら、パフォーマンスを念頭に置いて設計されたeラーニングは、説明責任の少ない予測可能な安全な環境の中で、探求とリスクをとることを促すからです。また、何がうまくできたか、どこを改善する必要があるかを伝える文脈的フィードバックという形で、建設的なサポートを提供する機会もあります。
つまり、「安全な」失敗を許容するeラーニングは、学習者が間違いを認識し、それが業務で表面化する前にトレーニングで修正できるよう支援する、賢い方法なのです。
プロセスとしての学習について話す
企業組織によっては、学習は「イベント」であり、合格という成果を得るためだけにコントロールしているようなことがあります。しかし、テストに合格することは、その人がテストに合格する能力があるかどうかを示すだけで、重要な仕事を遂行する能力があるかどうかを示すとは限りません。
もし、あなたの組織がテストの点数にこだわっているなら、学習はダイナミックなプロセスであり、高度に反復的で、高度に個人的であるという事実によって、より複雑になっているということを話し始めるべきです。つまり、学習と成長は、安全な実践環境を提供することで実現するのです。実践環境とは、通常、試し、失敗し、フィードバックされ、そして再挑戦するから構成されます。
失敗を恐れている自分に対処する
eラーニングデザイナーを含め、誰しも失敗、それも「建設的な」失敗を楽しむことはできません。しかし、学習というプロセスを本当に受け入れるには、eラーニングの失敗に対する自分自身の恐怖に向き合い、克服する必要があります。ここでは、そのための実践的なヒントをいくつか紹介します。
期待値を設定し、明確で達成可能な目標を提供する。学習者があなたのコースを受講する意欲をなくしてしまうことを恐れているのですか?トレーニングの妥当性を示すと、受講者はより熱心に取り組み、やる気を見せます。なぜそのコースに興味を持つべきなのかを最初から示しましょう。何を学ぶのか、その新しい知識やスキルがどのように自分を向上させるのかを説明しましょう。学習者の心に響くような方法で目標を提示し、eラーニングの技術的な制約の中でそれぞれの目標を達成できるようにします。
焦点を絞った、適切で、説得力のある内容を書く。よくある設計上の懸念として、あなたが共有する内容が退屈であるために、学習者がただ聞き流してしまうということがあります。しかし、内容がつまらないからと言って、より魅力的なものにするための工夫ができないわけではありません。 まずは、内容を簡潔で、適切で、説得力のあるものにすることに集中しましょう。受動的な読み物をインタラクティブなエクササイズに変えたり、退屈なポリシーや手順の背後にある重要性について実話を交えて説明したりするのです。 退屈なトレーニングを避けるためのアイデアは、記事「退屈なコンプライアンストレーニングを回避する3つの方法」をご覧ください。
学習者をもっと信頼する。学習者が「ズル」や「スキップ」しないように、あるいは「すべての情報を見させる」ために、ロックしたナビゲーション、画面上のナレーション、100%の合格点といった要件が満載のeラーニングコースは、私たち自身の設計失敗への恐れとしてよく見受けられます。 なぜこれほどまでに学習者に不信感を抱かせるのでしょうか?しかし、だからといって、学習者をもっと信頼するような新しい方向へ話を導く力があなたにないわけではありません。 学習者をもう少し信頼するためのアイデアには、次のようなものがあります。
学習者に最初にテストするという選択肢を与える、またはミッションクリティカルなトレーニングトピックでない場合は、クイズを完全にスキップさせる。
受動的な講義や読書を、よりチャレンジングな意思決定シナリオに置き換える。
パフォーマンスへの期待があまりないコースを作成する場合は、内容を短く、消化しやすいものにすることで、受講者の時間と知性への敬意を示す。
最後に、学習者がいつテストするのか、いつ実践するのかを明確にする。学習者があなたの期待に戸惑うことを恐れていますか?急にテスト実績が残るようなテストをするeラーニングほど、eラーニングへの信頼を急速に崩すものはありません。どのアクティビティが練習用で、どのアクティビティが成績評価用なのか、明確に伝えるよう心がけましょう。 魅力的なインタラクションをデザインするための、より的を射たポイントは、こちらの便利な無料のeBook(英語)をご覧ください。
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失敗は、そこから学び成長しない限り、真の失敗とは言えません。eラーニングのスキルを継続的に向上させたいのであれば、E-Learning Heroesコミュニティに勝るものはありません。まずは、これらの関連記事を読んでみてください。
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